山城・平山城・平城の違いって何?それぞれの特徴を徹底解説

戦乱の歴史の舞台となった日本のお城にはそれぞれ物語があり、今なお多くの人を惹きつけてやみません。旅行先でお城を見学するという方も多いかもしれませんが、それぞれ築城された地形によって「山城」「平山城」「平城」「水城」という4種類に分類できることをご存じでしょうか?

具体的にどのような違いがあるのか、本記事では城郭建築の種類について徹底解説!後半では、お城見学をより楽しむための見どころポイントも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

大きく分けて4種類!城郭建築の種類と特徴とは

冒頭でお伝えしたように、日本のお城は大きく分けて以下の4種類に分類されます。

・山城
・平山城
・平城
・水城

それぞれどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

山城

「山城」は、古代(飛鳥時代〜奈良時代)にはすでに築かれていたとされるお城です。大陸の唐、新羅からの侵略に備えたものといわれており、西日本の各地に築かれました。中世以降で本格的に山城が築かれるようになったのは南北朝時代以降です。鎌倉時代までは荘園領主の館が砦の役割を担っていましたが、南北朝時代に入り戦が増えてくると、戦闘時の防衛拠点として館とは別に山城が築かれるようになりました。自然の地形を生かして容易に堅固な防衛拠点を築ける山は、城をつくる場所としてうってつけだったのでしょう。この南北朝時代の山城は、簡易な櫓などを建てるために山上に平坦な地(曲輪・くるわ)を造成し、天然の山肌を活かしつつ、要所には空堀や土塁、柵などを設けたものでした。当時の山城は生活拠点としての利用を想定していなかったため、平時の領主はふもとの居館で生活し、戦時になると居館から山上の城へ籠って戦っていたと考えられています。

そして、戦国時代になると規模の大きな山城が作られるようになります。本丸のほか、峰続きの山にまで曲輪が拡張され、二の丸、三の丸をもつ城が築かれるようになりました。中には、近隣の山にも支城を築き、周辺一帯を要塞化するものもあったようです。また、この時代は他国との戦や内乱など合戦が増えたこともあり、越後の「春日山城」や安芸の「吉田郡山城」のような、城主が普段の生活を営む居館を兼ねた山城も作られました。しかし、城郭建築の技術発展とともに山城の数は減少。険しい山上でなくても防衛力の高いお城を築けるようになり、築城の主流は山城から平山城や平城へと移っていきました。

古代や中世の山城は、城郭の名残として堀切や土塁などが残っている程度ですが、戦国期の山城になると石垣が残っているところもあります。天空の城として有名になった竹田城などがその例です。平城や平山城などは都市開発によって遺構が残っていないものも多いですが、開発を逃れて遺構が残っているのは、険しい山に築かれた山城ならでは。もし行く機会があれば、貴重な山城の遺構をじっくり観察してみてはいかがでしょうか。ちなみに、「日本三大山城」と呼ばれているのは、本丸の標高が717mで日本一の「岩村城」(岐阜県)、南北朝時代に築城されたという「高取城」(奈良県)、現存十二天守の中で唯一の山城「備中松山城」(岡山県)です。

平山城

「平山城」は、山や丘陵からふもとの平地にまで城郭が広がっている建築様式で、戦国末期頃から築かれるようになりました。山城から平山城へと主流が移った理由は諸説ありますが、一説では戦国時代に入り動員する兵の数が増え、それを収容するための広い場所が必要になったこと、そして戦の主力が騎馬隊から鉄砲隊へ変わり、騎馬隊を防ぐ必要性が低下したことなどが要因として挙げられています。

また、中には山城として築かれたにもかかわらず、拡張し続けた結果、平山城になったというお城もあります。その1つとして有名なのが、神奈川県の「小田原城」です。もともとは八幡山に築かれた山城でしたが、拡張を続けてふもとの城下町を飲み込み「総構」という広大な城郭を持つ平山城に成長しました。

そして、山城に比べて立地の制限が緩い平山城は、交通の要衝に築城したり、その周辺に家臣たちを住まわせたりと城下町を発展させる要因が揃っていたことから、単なる防衛拠点としての役割だけでなく、政治、経済の中心という色合いも帯びるようになりました。

なお、日本で初めて築かれた平山城は織田信長が築城した「安土城」とされています。交通の要衝に築かれた平山城の周辺は、都市開発によりすでに城郭の遺構が無くなってしまっているところが多くありますが、街並みや地域の名前などから城郭の名残を見つけられることもあるので、周辺を散策してみたり、その地域の地図を見たり、周囲にも目を向けるることでより深くそのお城のことを知れるしれません。ちなみに、「姫路城」(兵庫県)、「松山城」(愛媛県)、「津山城」(岡山県)は日本三大平山城としても知られているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

平城

平山城と同じ頃から築城されるようになったのが「平城」です。4種類ある城郭建築の中で最も防御が手薄だと考えられていますが、広大な平地を戦略的に縄張りにできるという利点があります。また、川の水を引き入れることで水堀を二重、三重に巡らせ敵の侵入を防ぎつつ、仮に敵が侵入しても壁や石垣で造られた迷路のような通路で足止めしながら自分が攻撃するということも可能でした。

平城でありながら敵の大軍を迎え撃ったお城として有名なのは、真田昌幸が築城した長野県の「上田城」でしょう。南は千曲川と千曲川が削った崖をもって天然の水堀とし、北と西に矢出沢川の水を引き入れた水堀を備えた上田城は、徳川の大軍を迎え撃った第一次上田合戦で徳川軍を総崩れに追い込んだといわれています。これは、防衛機能の低い平城でも戦術次第では大軍の攻撃を跳ね返せるということを証明したエピソードといえるでしょう。

ちなみに、徳川家康が関ケ原の合戦で勝利した後に築城した二条城も平城とされています。しかし、これは家康の京都での滞在所として造られたため、小規模で防衛という観点ではかなり脆弱なものでした。一説では、徳川の治世となり、仮に攻められたとしても「数日持ちこたえれば援軍が来る」という前提で築かれたともいわれています。

このように、全国的な戦乱が収まってから築かれたお城は、それまでの防衛拠点としての役割から、政治、経済の中心地としての意味合いが強いものになっていきました。それに伴って城郭の構造も変わっていったと考えられているため、戦乱の時代に建てられたお城と天下泰平の時代に建てられたお城の違いを探してみるのも面白いかもしれません。

水城

海や湖、河川に面して築かれたお城の中でも、特に舟入(船着き場)を持つお城のことを「水城」といいます。有名な水城としては愛媛県の「今治城」が挙げられるでしょう。ちなみに、今治城は築城の名手・藤堂高虎によって築かれた海に面したお城で、三重の堀には海水が引き込まれ、その当時は舟入(港)が設けられていたといわれています。

なお、この「今治城」と「高松城」(香川県)、「中津城」(大分県)の三城が日本三大水城として知られています。水城には他のお城にはない舟入(港)が作られていたとされているので、その遺構があればぜひ確認してみてください。

お城に行ったらここもチェック!見どころポイント5選

最後に、お城見学に訪れた際にチェックしておきたい見どころを5つ紹介します。お城の種類とあわせて、次のようなポイントにも意識を向けてみてください。

①天守閣

天守閣はお城の顔ともいえる建造物です。

残念ながら天守閣を喪失してしまったお城が多くありますが、弘前城(青森県)、松本城(長野県)、丸岡城(福井県)、犬山城(愛知県)、彦根城(滋賀県)、姫路城(兵庫県)、松江城(島根県)、備中松山城(岡山県)、丸亀城(香川県)、松山城(愛媛県)、宇和島城(愛媛県)、高知城(高知県)では、築城当時の姿を見ることができます。

いずれも貴重な建築物として国の重要文化財に指定されているので、これらのお城を訪れた際は天守閣に注目してみてください。

※天守閣について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>お城の天守閣とは?機能や分類、天守閣のある城・ない城について紹介!

②石垣

石垣もお城好きにはたまらないポイントです。

時代によって石の積み方が違っていたり、当時石垣を積んでいた職人たちが石に彫り物をしているのが残っていたりと、石垣にもお城ごとの個性が見て取れますよ。

※石垣について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>石垣がすごい城はここ! 石垣の構造や積み方についてもあわせて教えます!

③堀

天守閣や建造物に目を奪われて意外と見過ごしてしまうのが堀です。

深さや幅が城によって違ったり、空堀のところと水堀のところがあったり、石垣と同様に堀にも個性が出ているので、じっくり観察してみてください。

※堀について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>水堀や空堀だけじゃない?お城の堀の種類について徹底解説

④城門

お城見学に行ったら、城門にも目を向けてみてください。お城を攻める敵の視点で見ると、ただの門ではないことに気づくでしょう。

例えば、門の上の方に小窓のようなものがあったらそれは「櫓門」です。小窓のようなところから向かってくる敵を鉄砲で撃っていたのです。また、門をくぐるときも前だけを見ていてはいけません。ちょっと上を見上げてみると、そこにも窓みたいなものがあるかもしれません。それも敵を攻撃するためのものなのです。

このように、城門には当時の知恵や工夫が詰まっているので、隅々まで目を配ることで隠された魅力に気づけるかもしれませんよ。

※城門について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>お城の門は単なる出入口じゃなかった!城門の役割や種類について解説

⑤櫓

櫓は天守閣に次いで目立つ建造物といってもいいでしょう。特に三重櫓は櫓の中でもっとも格式が高く、天守閣を持てない小さなお城では三重櫓を天守閣代わりとしていました。

ただ、三重櫓も現存数は多くなく、頻繁にお目にかかれるものではないので、訪れたお城にあったら要チェックです。

※櫓について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>お城の櫓は何に使われていたの?由来や種類など櫓の基本を詳しく解説

立地の変遷にも歴史がある

今回は、お城の種類について解説してきました。ここまでお伝えしてきたように、日本のお城は築城された立地の変遷にもしっかりとした意味があります。お城の在り方を知ることでお城見学の楽しさが倍増するので、もし旅先などでお城を訪ねる機会があったら、その種類や背景を調べてみてはいかがでしょうか。