声域とは?種類や特徴からチェック、広げる方法まで解説

声域とは?種類や特徴からチェック、広げる方法まで解説

歌唱における表現力を高めるには、声域の拡張や歌声にバリエーションを持たせることがポイントです。本記事では、声域にフォーカスしつつ歌声についても言及します。基本概要から種類、特徴、自身の声域を確かめる際のチェック方法や広げ方まで幅広くピックアップ。ぜひ、アカペラにも役立てていただけますと幸いです。

声域とは

声域とは

発声可能な音域を指す声域は、人によってさまざまです。性別、体格の違いはもちろん、トレーニング方法によっても変わってきます。

一般的に女性や子どもの声は高く、男性の声は低い傾向です。男性と女性で声域の高さに違いが出るのは身体の成長が関係しています。赤ちゃんの頃は声の高低差はありませんが、成長していくにつれて身体が大きくなるため声道も長くなり、会話力の向上により低音域が広がっていくのです。第二次性徴の変声期になると男性の声帯は大きく変化し、それ以前に比べると約1オクターブ低くなり、高音域が狭くなります。そして、男性ほど顕著ではないものの、女性も同様です。成長するにしたがって声帯が長くなるため、若干低くなります。

6種類の声域とそれぞれの特徴

歌う女性

声域は一般的に女性パートが3種類、男性パートが3種類の合計6種類に分けられます。

イメージしやすいのはおそらくオペラのシーンではないでしょうか。

それぞれ、(オペラにおける)典型的な役柄とあわせて特徴を紹介します。

ソプラノ

いわゆる女性パートで最も高い声域に当たるのがソプラノです。多くの人が透明感のあるクリアな歌声で華やかな印象を抱くと思われます。ステレオタイプな価値観とはいえ、オペラではヒロインや女神、妖精といった神秘的な役が似合う声です。

アカペラの場合、メロディーラインを担当することがほとんど。加えて、表現力が求められるパートです。

アルト

いわゆる女性パートで最も低い声域に当たるのがアルトです。安定感を伴いつつ響きに落ち着きがあります。オペラでは、魔女や侍女の役が演じられるなかで歌われることの多い音域ですが、美青年役にも該当するのが特徴的といえるでしょう。アカペラでも厚みを出すのに効果的に作用します。

メゾソプラノ

ソプラノとアルトの中間域を担当するメゾソプラノは、豊かな音色と響きが特徴です。オペラでは主に母親役の声として扱われる音域です。アカペラにおいては、やわらかなハーモニーの醸成に一役買ってくれます。

テノール

いわゆる男性パートで最も高い声域です。若々しくエネルギッシュかつ華やかさを併せ持つ印象を与えてくれます。オペラでは王子や青年といった役どころに起用されることがしばしば見受けられます。裏声メインのソプラノとは対照的で、テノールは地声であることも特徴的です。

バス

いわゆる男性パートで最も低い声域です。重く響きどっしりとした威厳のある印象を与えてくれます。オペラでは、王様役が典型的かもしれません。一方で悪役が出す声もバスの音域であるからこそ雰囲気が生まれます。つまるところ、威厳や存在感が一つの共通項でありテーマとして挙げられるでしょう。

バリトン

バリトンはバスとテノールの中間の声域で、テノールの繊細さとバスの重厚さを持ち合わせていることが特徴です。バリトンのなかでも高音はハイバリトン、低音はバスバリトンと呼ばれます。なお、オペラでは、渋い中年男性役や父親役に(バリトンの声は)ハマりやすいです。

主な歌声の種類

歌う男性

声域を語るうえで、歌声についても触れないわけにはいきません。

以下、主なタイプを紹介します。

チェストボイス

チェストボイスは俗に地声ともいわれる、息が混じらない声のことです。発声するときに胸が共鳴することからそう呼ばれています。輪郭が明確なため、聞き取りやすい声です。

ヘッドボイス

ヘッドボイスは裏声のなかでも息の音が混ざらずにはっきり聞こえる声のことを指します。発声するときに頭が共鳴することが呼称の由来です。なお、クラシックの声楽家は、ソプラノの発声法にヘッドボイスを使います。

ミックスボイス

ミックスボイスはチェストボイスとヘッドボイスをミックスした声です。地声の持つ力強く豊かな響きと裏声の持つ軽い響きの混淆が、適度なバランスの調整を以て魅惑的な和声として表出されます。

ファルセットボイス

ファルセットボイスは多くの息が混ざった裏声です。喉に力を入れすぎないことがポイント。息を沢山流すことで、やわらかい質感が作られます。上級者になると、チェストボイス、ヘッドボイス、ミックスボイスそれぞれに絶妙な塩梅で織り交ぜていくことも可能。こうしたテクニックも踏まえて、表現力を上げるにはもってこいの歌声です。

自分の声域をチェックする方法

自分の声域をチェックする方法

自分の声域がどこに当たるのか、気になる方は少なくないでしょう。その探り方を知らない方は以下、試してみてください。

鍵盤楽器を使う

ピアノやキーボードがあれば、手っ取り早く自分の声域を確認できるでしょう。やり方は簡単です。音を鳴らし、同じ音が自分の声で出せるか試すだけ。基準の音を任意で設定し、そこから半音単位で上げ下げを行い、可能/不可能を探り当ててください。

動画でチェック

鍵盤楽器が無い場合でも、今の時代、動画で確認できるから便利です。具体的には、YouTubeチャンネルの「声域調査」でチェックできます。

ちなみに、平均的な日本人が地声で出せる声域は、男性が低いソ(G2)からやや高いソ(G4)、女性が中間のミ(E3)から高いド(C5)などといわれています。

声域を広げるための練習法

声域を広げる練習

練習によってある程度は声域を広げることが可能です。

とはいえ、具体的に何をすればいいのか分からず困っている方もいらっしゃるでしょう。

以下、いくつかおすすめの練習法を挙げていきます。どれも基本的なことばかりですが、大切なのは継続です。日々、向き合う時間をしっかり設けることを意識してみてください。

腹式呼吸のマスター

歌うときは喉からではなく、お腹から声を出すのが正しい方法です。お腹から声を出すことで喉に無駄な力を入れずに歌うことができます。逆に喉から声を出してしまうと(喉を)傷めてしまう恐れがあります。いずれにせよ、喉が締まった状態になるため音域を広げることは難しいでしょう。

要するに、発声の基本と呼ばれる腹式呼吸をマスターすることが声域を広げるには不可欠なのです。

腹式呼吸は横隔膜といわれる肋骨とへその間にある筋肉を使います。歌う際、自然に行えるようになるためには、とにかくここを意識し、反復する練習が必要です。

なお、口を開けて犬のように「ハッハッハッハッ」と短く呼吸すると横隔膜も動きます。この、いわゆるドッグプレス法が腹式呼吸をマスターするのにおすすめです。

裏声を鍛える

高音域を広げるためには、裏声を鍛えることも大事です。裏声は、喉を開き、声を鼻腔に響かせて出します。いうなれば、鼻歌に近い感覚です。その要領で音程を少しずつ上げていくことで、高音域が出やすくなります。

ミックスボイスにチャレンジ

裏声が出せれば、次はミックスボイスに挑戦してみましょう。ミックスボイスを出すには、まず裏声を発し、音の高さを維持しながら地声を混ぜていきます。もちろん、その状態で音程を上げていけば、ミックスボイスでも高音が出せるはずです。

慣れてきたら、あらゆる曲をミックスボイスで歌ったりする訓練を積んでいきましょう。ミックスボイスをマスターすると、出す声の響きに艶が、表現には幅が生まれます。高音にハリが出やすく、如実に声域の広がりが感じられます。

低音域にはチェストボイス

低音域を広げるには胸で響かせるチェストボイスが有効です。具体的なトレーニングメニューは、口を閉じた状態で鼻歌を奏で、そのまま口を徐々に開け、最終的にはしっかりと歌っていくというものです。もちろん、低い音は維持しなければなりません。最終的に胸と口の両方を使って低音が出せることを目標にします。声を出しているときに胸の真ん中に手を当てて振動しているかどうか確認してみるのもおすすめ。音程を少しずつ下げるなどして繰り返し行えば、きっと低音域を広げることができるはずです。

声域を理解することで、自身の声も操れるようになる!?

声域を意識して歌う少女

アカペラや合唱では、各声域に役割があり、それゆえ得も言われぬダイナミズム、躍動感が伝わってくるわけですが、拙稿にて取り上げた内容からも分かる通り、そうした現象には、裏付けとしてメカニズムがしっかり存在しています。

「声域を広げたい」「もっと自在に声を操りたい」といった願望を抱く読者の方はきっと少なくないはずです。

無論、トレーニングでダイレクトにそうしたスキルを身に付けられる期待は持てますが、同じく、声域に対する知識を増やせれば、プラスに働くことがあるでしょう。

したがって、(声域への)理解を深めることもおすすめします。