【入門編】アカペラのやり方とは?ハモリのコツやアレンジについて解説

アカペラする人々

楽器による伴奏をつけずに人の歌声だけで歌うことを「アカペラ」といいます。リードボーカルやコーラス、ボイスパーカッションなど、複数人が別々のパートを担当して合唱し、「ハモる」のがアカペラの基本的なスタイルです。

「アカペラ」という言葉の由来は、”a capella(礼拝堂風に)”というイタリア語。音楽の表現技法のひとつとして、キリスト教のミサなどで歌われる賛美歌のような歌唱を指すものでした。賛美歌は基本的にオルガンの伴奏があることからもわかるように、本来は必ずしも無伴奏の合唱ではなかったようですが、現代のアカペラは原則として無伴奏とされています。また「礼拝堂風に」とはいうものの、現代では必ずしも賛美歌を歌う必要はなく、クラシックからポップスまでさまざまなジャンルの楽曲を用いたアカペラが楽しまれています。

今回は、これからアカペラを始めてみたいという方に向けて、アカペラを始めるまでの流れと練習方法の簡単な紹介をします。この記事を読んだら、アカペラを始めてみたくなるかもしれません。

歌うジャンルや楽曲を決める

曲

一番初めに決めておきたいのは、自分がどんなジャンル、どんな楽曲でアカペラをやりたいのかということです。アカペラに触れていくうちに変化していくかもしれませんが、「とりあえず」で構いませんので、一旦自分の方向性を明らかにしておきましょう。

それによって、編成は男声(男性のみのグループ)か女声(女性のみのグループ)か混声(男女混合グループ)か、メンバーは何人集めれば良いのかなども自ずと絞られてきます。またジャンルを定めておくことで、同じ志向を持った人を探しやすくなるため、メンバー集めのハードルが下がります。

一緒に歌うメンバーを集める

アカペラはソロ(独唱)から大人数での合唱までさまざまな編成がありますが、やはり複数人で声を合わせてハモる心地よさを味わえるのが、アカペラの大きな魅力といえるでしょう。表現の仕方や歌える曲の幅も広がるため、可能であれば一緒に歌える仲間を見つけたいところです。なおアカペラでもっともオーソドックスな編成は、「リードボーカル1名、コーラス3名、ベース1名、ボイスパーカッション1名」の6人組だといわれています。

メンバーを探すには、TwitterをはじめとしたSNSで検索したり、学校や社会人のサークルに所属したりする方法が一般的です。特にサークルや部活などのグループに入れば自然とアカペラをする人たちとの繋がりが増えるため、インターネットを介するよりもジャンルや志向が近いメンバーを見つけやすいといえるでしょう。

どうしてもメンバーが見つからない場合には、ひとりで複数のパートを録音し、PCで編集して1本にまとめる「ひとりアカペラ」をするのも選択肢のひとつかもしれません。ある程度の機材を揃えたり、操作を覚えたり、多数のパートを練習したりする必要はありますが、その分自分の好きな曲を好きなペースで歌っていけるという良さがあります。

楽譜を購入または作成して手に入れる

楽譜

一緒にアカペラをするメンバーが集まったら、練習していく曲を決めましょう。楽譜はアカペラ用楽譜が市販されているものなら、購入するのが楽です。アカペラ用の楽譜が販売されていない曲やオリジナル曲を練習する場合、または楽譜を購入したくない場合は、原曲からアカペラ用の楽譜を作成することになります。

原曲から楽譜を作る際には、基礎的な音楽知識や聴いた音を音符で表す「耳コピ」の能力が求められます。原曲がアカペラでない曲であれば、本来楽器で演奏されていた部分を少人数のボーカルに置き換えることになるため、ただメロディを書き写すだけではなく「編曲(アレンジ)」に近い作業が必要です。

サークルなどのグループに入ったのであれば、楽譜づくりができる人がいる可能性もあるため、いずれは自作できるよう訓練していくとしても、はじめは無理せず誰かに依頼するのも良いでしょう。

アカペラの練習方法

アカペラの練習方法を大きく分けると、「個人でおこなう練習」と「メンバー同士で集まっておこなう練習」の2つに分けられます。「どうせ集まるんだから最初から全員でやればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、個人のスキルを高めることと、グループのハーモニーを高めることは別々におこなうべきです。

メンバーが集まっているときに個人練習をおこなっても、一人ひとりの課題は深堀りしにくいでしょう。グループで歌うときの感覚を個人で再現することはできないので、集まったときはグループ練習に時間を使いたいところです。個人練習とグループ練習のバランスをうまく取り、どちらかに偏らないようにする必要があります。

それぞれの練習法には様々なものがありますが、ここでは基礎的な方法を紹介します。

個人での基礎練習

個人でおこなえる基礎練習は、いわゆる「ボイトレ(ボイストレーニング)」と呼ばれる一連の練習が代表的です。ボイトレのやり方はYouTubeなどで様々な方法が紹介されていますが、その目的を一言でまとめると「出したいと思った音を、出したい表現で、正確に出せるようにする」といえるでしょう。

そのために声量のコントロール法を学んだり、より広い音域で歌うことを目指したり、音程の正確さを磨いたり、といった目的別の練習をおこないます。これらを総称して「ボイトレ」と呼び、総合的な歌唱力を向上させるために繰り返しおこなっていきたい練習です。

その他、現在練習している曲で自分が担当するパートが歌えるよう、キーボードや音源で音程を取っておく「音取り」をおこなっておくことも、グループ練習の準備として必須です。

グループでの練習

グループでおこなう練習を通じて、気持ちよくハモれることを目指します。音楽演奏の経験が乏しい場合は「ハモっている状態」がどのような感覚か分からないかもしれません。まずは「ハモっている状態」がどのような音の響きになるかを体感することが必要です。

感覚を掴むには実際にハモっている音を聴いてみるのが一番簡単でしょう。キーボードなどで和音を弾いてみる、YouTubeなどでアカペラの動画を見るといった方法が考えられます。できる限り「ハモっている状態」の感覚を掴んでおくことで、自分たちが目指すべき状態が把握でき、練習しやすくなるはずです。

発表の機会を探す

アカペラの練習を始めたら、自分たちの歌を発表する機会を探しましょう。どのような形であれ「この日に人前で歌うんだ」という目標を持つと練習に意義が生まれます。それにより、なんの目標もないまま漫然と練習を続けるよりも上達しやすい環境を作ることができるはずです。

地域のアカペライベントに出演する、ストリートライブができる場所・機会を探す、自分たちの実力を知るためにコンテストに出場するなど、仮でもよいので何かしら「本番」を設定することをオススメします。

ただし、現在開催されている全国的なライブイベントには、出演者を決めるための選考がコンテスト形式になっているものが多く、他グループとの競い合いを避けるのが難しい状況にあります。どうしてもコンテスト形式を避けたいという場合は、先着順のライブイベントを探してみる、ライブやイベントを開催できる身近な施設を探してみる、といった方法が考えられるでしょう。

日本国内で現在も開催されているアカペライベントのうち、代表的なものを以下に紹介します。公式サイトまたはTwitterにリンクしていますので、興味がある方は確かめてみてください。

A capella Spirits!

Japan A capella Movement

ソラマチアカペラストリート

「今」からアカペラを始めてみよう

アカペラは自分の声さえあれば楽しめる音楽です。高価な楽器を購入する必要もなく、やってみたいと思ったその瞬間、今このときからでも始めることができます。

音楽に触れるきっかけとしても非常にお手軽で、これまで音楽に親しんでこなかった人であっても、アカペラを練習しながら音楽を学んでいくことが可能です。この記事を読んで興味を持ったなら、ぜひアカペラの世界に飛び込んでみてください。